祖父が敗戦時台北帝国大学の要職にあり、父は地元国立大学教授だったというお宅。二人が亡くなった時にはそれぞれ「図書館からなにから人がいっぱい来て本や資料を皆持っていった」そうで。長い間空き家にしていたお宅を整理する、その最後の始末に「できるだけ持っていってください。後はみな捨てますから」と言われるけれど、残念ながら何も残ってはいない。
絵はがきが二枚。
「こういう紙切れ類はなかったんですか?」
「古い絵はがきならいっぱいあったけど、姉が『こんな汚いもの誰も欲しがらないわよ』と言うんで、今度せっせと捨てたんですよ。大変だったんだから」
午後の買取予定はキャンセルになった。
「急な客があって、いつ帰るか判らないので、今回はやめときます」
「亡くなった主人が満州生まれなので」その関係の本。ちょっと期待していたのに、残念。
きっとご主人の本がなくなってしまうのが寂しくなったのだろう。無理もないです。