飯塚2



着いて早々
「娘が『ただで本をやるのはおかしい。全部捨てるわけではないだろうから、その分のお金をもらえ』と言っている」
と言われ、いささか気が萎える。
娘さんがいたとは知らなかった。
この娘さん、水害の後数年も両親を水濡れドロドロの本の間で生活させてなんとも思わなかったのか。
自分で片付けれてやればよさそうなものだ。
水害の後始末がどれほど大変か。特に今日の本はどれも床に貼り付いて剥がすだけでも一仕事。本を除けた後のソファーもカビでグズグズだったぞ。
捨て本だけを先に片付けて、と思っていたけれど、いつお役ごめんになるかもしれないので、今日は棚の上の方、無事な本も十数箱積み込んだ。
帰って、店の前、昨日今日百本近く積み上げた捨て本の山を見るとため息がでる。
しかし、「七十過ぎたらもう本の始末など手に負えんとですよ」という老夫婦も気の毒だし「明日は何時に来ていただけますか」とも言ってたし、行くしかないか。