飯塚市



電話で「六千冊くらい」と聞いていたけれど、なるほど6,000冊。もっと多いんじゃないだろうか?
5、6坪の事務所に天井までの作り付けの本棚が4本。前後ろから本を詰め込んで、棚がたわんでいる。事務机の上、応接用のテーブル、ソファー、縦横高さ1メートルくらいの大きなコピー機の上にまで本が積み重なっている。台所もシンク以外は本の壁で何も見えない。床も膝まで本で埋まり、足をどうにかすべらせる隙間があるだけ。


「水害でね、やられちゃってもうダメ。全部持ってってください」
あの嘉穂劇場が水没したのは何年前だったろうか。
「だいぶ捨てたんだけどね」
とおっしゃるけれど、ざっと見渡しただけでも水濡れブヨブヨの本がそれこそ山のようにある。


「全部持っていけばお金はいらない」という条件で引き受ける。
まだ母屋にも本があるというし、一割助かれば千冊だ。四日間(四日ですむだろうか?)の片付けアルバイトと割り切ろう。


古本屋新刊屋のビニール袋に入ったまま床に積み重なっている大山から手をつける。一袋5冊から20冊。開けても開けてもすべて水濡れ。平均十数冊が数十袋。ただの一冊も助からなかった。すえた匂いで頭がクラクラした。


結局、今日初日は床の半分を空けただけ。


行きは八木山峠を越えたけれど、ゴミ本を詰め込んだ帰りはとても山越えは無理。直方・宗像経由で倍も時間がかかってしまった。