明日最終日

もう即売会も残すところあとわずか。撤収準備で、のぼりの台を五つ台車に積み上げ、福岡タワー前広場をそろりそろりと駐車場に向かっていると、前に立ちはだかったおじさんが、
「二つ同じものを繋いでるんだねえ、いやたいしたもんだ」
と笑いかけてくる。
「ほら窓もね、まったく同じなんですよ」
指さす先のタワーは、近すぎて、のしかかってくるガラスの壁面しか見えない。二つの構造物を繋いでいるというより、方形の角が少し凹んでいるだけではあるまいか。それに右と左の窓が同じ形なんて、そんなに珍しいことか?と思うけれど、ここは、
「ああ、そうですねえ、ははあ」
とでも答えておくしかない。
「いや、僕はね、こんなひょろ長いものがどうして倒れないのか不思議でたまらんのですよ。いやたいしたもんだ」
「東京では今、大きなタワーが建設中で・・・」等々ひとしきりの講釈の後、
「いや、お手間をとらせました。失礼いたしました」
深々とお辞儀をして立ち去っていった。
リタイヤ後、趣味の全国タワー行脚でもしているのだろうか。