決死の覚悟

朝起きるなりカミサンが「ねえねえ、玄関先に変なものがあるよ、なんだろ。怖いよ」と言う。屋根からダラリとワイヤが垂れ下がっている。「停電もしてないし、電話も通じるんだよね」って、当たり前だろ、電線でもないし、電話線でもない。ただのワイヤなんだから。
家を出る時に、少し離れて二階の屋根をみると、テレビアンテナがグラグラ揺れている。どうやら三方向に張ったワイヤが一本切れたらしい。
ひと仕事済ませて戻ったら、アンテナは倒れていた。先端は曲がり、折れてもいる。かなりの衝撃があったようだ。
わが家のテレビ生活はメインがケーブルで、アンテナはBSデジタルのみ。放っておいてもいいようなものだけど、あれが落ちたら困る。通行人にでも当ったらえらいことになる。さてどうするか?大型電機店に電話すると、まず日にちを決めて下見をして、見積りを出して、料金に納得していただけたら、あらためて工事、そんな大層なことらしい。一応予約はしたものの、店員さんの大仰な口ぶりがどうにも気になる。ネットで「テレビアンテナ」「工事」「◎◎電機」で検索、どうやら撤去だけでもン万円かかるらしい。そんなアホな。
仕事から帰ったカミサンに脚立を支えてもらい、二階の物干し場から恐る恐る屋根に上る。引っ越して十数年、初めてわが家の屋根に上った。二本足で立つなんてとんでもない、四つん這いで辿り着き、ペンチでワイヤをバチバチ切って、アンテナを下ろすまでほんの5分ほど。何ほどのこともなかった。初めから自分でやればよかったんだ。
◎◎電機はキャンセル大歓迎という気配。アンテナ撤去だけというような退屈な仕事は、それは気が進まないわな。
ひょんなことで、わが家は完全デジタル生活に突入することになってしまった。新しいケーブル契約は、なんと66チャンネルもあるそうな。