春来る

毎年この時期恒例、向かいの自転車屋のおかあさんがアサリをどっさりくれる。
「今年は特別おいしいよ」
たしかにおいしい。しかし、去年もこれくらいはおいしかったような?
「余所者に採られてしまうの悔しいじゃないの。あんたも採りにいきなさい」
と言うけれど、この辺りは古い漁師町で、バス通りに並んだ商売人は皆そもそも余所者じゃないだろうか。居住歴わずか10年の古本屋はもちろん、自転車屋さんも。