三月の海はまだまだ寒い

午後3時。矢部村の山暮らしの先輩がいきなり来て「おい、海に行くぞ」と言う。「今から引き潮だ」
そういえばこの先輩、昨年暮の飲み会で「ワカメやヒジキを採って塩漬けして一年中食ってるんだ」と言ってたなあ。その採集地が当店近くの志賀島だそうで「俺の縄張りを荒らしてけしからん。この次は連れて行け」と、さんざん絡んだのだった。
志賀島勝間海岸まで30分。
先輩はサンダルに長そでシャツ一枚。手足を捲り上げてそのまま海に入っていく。軟弱な都会人(私です)は、迷ったあげくフリースの上着をもう一枚。
「長靴はいたって、すぐにびしょ濡れになるから同じことだ」と言うけれど、それはやっぱり違う気がする。海岸線に散らばった2、30人、我々の他にサンダル履きなんかいやしない。胸まである長靴(胴引きとでもいうのか)長〜いゴム手袋、羽毛服まで着込んでいる人もいる。うらやましい。
よーく考えたら、私には海草も毒草もさっぱり区別がつかないのだった。ビニール袋を持ってウロウロするだけ。
水は冷たい、風も吹く。やたら転がっているウニ()に裸の足を刺されたら、ちょっと滑稽なことになりそうだ。
帰って、一袋分のワカメをゆでたら、シンクから溢れそうに膨れ上がってしまった。
※ウニ・サザエ・アワビは採捕禁止