顔認証

生命保険切替には証書が必要とのことで信用金庫に取りに行く。
たしか貸金庫に入れていると思うけれども、自信はない。
なにしろ7、8年も開けたことさえないのだから。
数年前香椎支店が建て替わってから、窓口に行くのは今日が初めて。貸し金庫もシステムが変わって、契約を切り替えなければならないらしい。
「ちょっとお高く(約2倍!)なりますけど、窓口を通さずいつでも利用できます。便利です。安全です」
「金庫室入ってみますか?私がやってみせましょう」
親切な女性社員が、金庫室入り口の最新認証システムの前に立ち、パネルに顔を突き出し、ボタンを押して数秒。赤い○が出たと思ったらすぐに「認証できません」ドアは開かない。
「女性の場合は髪型やなんかで、こういうこともあるんですよ」
両手で丁寧に髪をなでつけ笑顔を消してまたパネルへ。やはり「認証できません」
スーツの裾を引っ張り、咳払いをして姿勢を正して。「認証できません」
「すみません、お客さまの影が映っているのかもしれません」
追っ払われて3メートル後ろから見ていると、またまたまた「認証できません」
ため息ついて、パネル横のテンキーに素早く数字を打ち込んで、振り向いてニッコリ「さあ開きました」
指紋認証にしておけばよかったのにねえ。
肝心の証書は印鑑を間違えて出直しになってしまった。