箱崎。一昨日の市会の最中、散歩がてらにチラシを撒いた、その成果らしい。
赤い煉瓦壁に囲まれた古いお屋敷。「これは、ひょっとしたら」呼鈴を押すのもドキドキする。応対のおばあさんもお上品でいかにも。「遠くまでお呼びたてして、本当に申し訳ございません」「なんのなんの、海越えてすぐですから、ははは」「大したものもないんですが」見せていただくと本当に何もない。紙くずばかり。紙くずといっても古本屋が喜ぶような紙くずではなく、本当の紙くず。大量のルーズリーフは学生の勉強の跡だし、手書きの楽譜はエレクトーン教室の成果らしい。最近の旅行パンフレットや新聞チラシ、電話帳まである。チラホラと混じっている本はひと昔前のベストセラー。それもヤケて汚れて。いつもなら、一目で「いらないです」と断るところだけれども「お役に立つものありますかねえ」とさかんに恐縮しているおばあさんの手前帰るに帰れない。「一ヶ所に集める元気がなくて」あちこち十ヶ所ほどに分散している紙袋やダンボール箱を、ほとんど祈る思いで必死に漁って、ようやく中途半端な年代の婦人雑誌十数冊を発見、ほっとする。即売会で一冊200円なら売れるかもしれない。売れたらいいんだけど。