久山町

開業以来二十数年、福岡市内はもちろん近隣郡部もくまなく本買取で出張しているつもりだけれど、どういうわけかこの久山町はまったく初めて。
大字○○17○○番地。地図で「この辺だろう」と見当をつけて来てみたけれど、田んぼや畑の間に家が散在、住居表示はもちろん、表札も道路からは見えず、目当ての家が、さてどこにあるのやら。
農作業のおばあさんが一人。
「すみません、17○○番地というとどの辺ですかね?」
「そんなこと言うたっちゃ、わしゃわからん」
にべもない。
何度も電話をかけて、細い道を曲がったり戻ったり。目印だという鯉のぼりも格納庫もあちこちにあってわかりゃしない。結局、最初に車を停めて地図を見た、その場所からわずか50mしか離れていなかった。本を積み込み終わったちょうどその時帰ってきたおばあさんは、さっき畑で道を聞いたおばあさんにそっくりだったけれども、まさかそんなはずはないよな。
帰り、立花山の峠越えは桜吹雪だった。