昼過ぎまでお客が絶えず、売上げ好調。しかしそれからがさっぱり。


「これ中見せてもらえます?」
差し出された本は、上、下二冊をビニールで包んだ『半島を出よ』ではありませんか。これ、前から読みたかったのだ。
「すみません。やっぱりいらないです」
これ幸い、ちょっと読ませていただこう。上巻を読み終わったところで閉店時間、さて続きの下巻を家で読みたいけれど、1,300円言い値を払うのはしゃくにさわるしなあ、S書房の当番の時に来てまけてもらうか、と迷っているところへ当の本人が「お疲れ〜」とのこのこ現れて、飛んで火に入る夏の虫。
「これ買ってやるからさ、1,000円にしときなさいね」
「え〜、え〜」
もう旬は過ぎている本だし、売れなきゃタダなんだから文句言うんじゃないよ。


この『半島を出よ』、福岡ドームだの海鷹ホテルだの豊浜だのよかトピア通りだの博多駅だの能古島だの、ほとんどご当地小説であります。