築百年

お隣の市からの電話で、どうやらNPOのような組織の方らしい。古い民家を借りて事務所にすることにしたけれど、なにしろ永い空き家で物置のようになっている。屋根裏に本や雑誌もありそうだから見に来るか、とのこと。
「出張料など取るんですか?」
とんでもないです。こちらから差し上げたいくらいです。
「価値があるものやらなんやらさっぱりわからないですよ」
全然かまいません。空振りでもかまいません。
「あんまり汚いから、掃除・整理してからまた連絡しますね」
オーマイゴッ!止めてくれー。お願いですから手をつけないで。


何年も前、筑豊の大きなお宅に呼ばれて行ってみると、お座敷に、立派な(どこにでもある)有名作家の全集が何十セットも並べている。家は建て替えたばかりのようでもある。
「他の本はどうしたんですか?」
と聞いてみると
「いい本だけ残して(全集のこと)後は全部燃やしてしまいました。何日もかかってオオゴトでした」
壊した家の屋根裏や倉庫には、紙くず類やくずれかかった本も多量にあったそうで、まったくなんとしたことか。そちらを見せてもらいたかったのに。
「せっかく遠いとこから来てくれるのに、汚い本じゃ気の毒で」


全集類は結局いただかず。なにしろ希望額が私の売値より高かった。